東京高等裁判所 昭和24年(新を)1147号 判決 1950年8月07日
被告人
金本福同
外二名
主文
被告人金本福同、同鈴木仙太郎の控訴はいづれも之を棄却する。
原判決中被告人平山道夫に関する部分を破棄し、宇都宮地方裁判所に差戻す。
控訴審に於ける訴訟費用は被告人金本福同の負担とする。
理由
職権を以て按ずるに、原審は(一)被告人金本に対する窃盜(二)被告人鈴木に対する賍物故買(三)被告人平山に対する恐喝という三個の異つた公訴事実を審理するにあたり(一)、(三)の事実に対し被告人鈴木を証人として公判廷で訊問する旨の決定をし、弁論分離等格別の手段をとることなく即座に宣誓をさせた上証人として供述させ、右証言を採つて右(一)、(三)の証拠に供しているのである。然るに共同被告人を弁論分離等の措置をとることなく証人として宣誓の上訊問することは刑事訴訟法上許されないものと解するから原審の右措置が違法であることは言をまたない。而して被告人平山に対する右(三)の事実については、右鈴木の証言なるものを除外すれば之を認定するに充分な証拠は尠くとも原判決挙示の証拠中には発見することができないから、右違法は右(三)の事実については判決に影響を及ぼすこと明瞭であり、従つて被告人平山に対する原判決は、破棄を免れない。且つ之を当審に於て自判するにも適しないから、原判決中同被告人に関する部分は刑事訴訟法第三百九十七条、第四百条により之を宇都宮地方裁判所に差戻すべきものと認める。
但し被告人金本に関しては、原判決に右違法はあるものの、鈴木仙太郎の証言の如きは被告人金本の右(一)の事実認定については別に証拠として必要なものでなく、右(一)の事実は被告人金本の原審公判廷に於ける供述と被害者の被害始末書及び追加被害届によつて裕に之を認定し得る次第であり、又被告人鈴木の右(二)の事実についても、同被告人の原審第四回公判廷に於ける被告人としての供述(記録第百十七丁裏十一行目の証人に対しと記載されているのは、被告人鈴木に対しという記載の誤りであると認める)、司法警察員の同被告人に対する供述調書の記載並びに前記被害者の被害届書、追加被害届等を綜合することにより、之を充分認め得るから、前記違法は原判決中被告人平山以外に関する部分については、影響を及ぼさないと認めるべきものである。